学術論文を取り敢えず読んでみよう

今回も長くなったことで、
以下に、章立てを付けます。

適当にスクロールして
興味にある部分だけでも
御笑読頂ければ幸いです。

はじめに
1、学術論文との付き合い方
1-1、論文とは何か?
1-2、学術論文の取っ付き難い理由
1-3、それでも読む価値はあるのか?
1-4、高い敷居をどう潜るか?
1-5、知の橋頭保を確保せよ
2、学術論文の探し方
2-1、検索サイトとキーワード
2-2、タダで読めるナルホド論文
2-3、学術書が分厚くて高い理由
2-4、学術雑誌はどこにある?
3、学術論文の生態
3-1、一番不要な冒頭部分
3-2、論文の常識は書き物の非常識?!
3-3、研究者のセールス御断り
3-4、激辛がクセになる本文
3-5、結論と展望と予告倒れと
【雑談】4、実践?!架空論文を読んでみよう
4-1、して、論文の主題は?
4-2、先行研究は愚策だらけ
4-3、史料読解とその手抜き読み
4-4、イロイロな「難しさ」
4-5、表も説明の助けとなる
4-6、瓦解する壮図と悲劇の英雄
4-7、論文では敗将も兵を語る
4-8、研究者は裴松之にあらず
4-9、出師の表と研究史の行方
おわりに(結論の整理)
【主要参考文献】
【場外乱闘編】多分、こんなの!前漢末の魚鱗甲(完成した図解の掲載)

はじめに

今回は、予定を変更して
学術論文の生態
変わった読み方について綴ります。

恐らく、著者の先生方が読まれたら
卒倒するような邪な内容であることを
予め御断り申し上げます。

予定変更の理由は、

恥ずかしながら、今描いている図が
完成までまだ時間が掛かることで、
代わりの記事を用意した次第。

奇病が流行しているうえに
連休も近いことで、

特に、腰を据えて
読書をなさる方には
多少なりとも御役に立てれば
望外の幸せで御座います。

加えて、最後に、
未完成の図についても
多少言及します。

1、学術論文との付き合い方
1-1、論文とは何か?

さて、学術論文とは、

コトバンクさんによれば、
新しい研究成果を内容とし、
一定の構成を持った論文、と、
あります。

要は、調べ事を
まとめた書き物ですが、
新説でなければなりません。

イメージとしては、

夏休みの自由研究を
各段にアップ・グレード
したもの、

と、でも、言いましょうか。

さて、この種の書き物の
おおまかな流れとしては、

まず、何かを主張する際に、

それまでの研究で
明らかにされなかったことを挙げ、

その課題について、

証拠を提示して
専門的な方法で結論を導きます。

また、理詰めで物事を説明する
必要があるため、

小説のような
情緒的な表現を排した
極めて事務的な文章になります。

具体的な手順を言えば、

アリバイ崩しのようなロジック
好例でしょうか。

例えば、奥様が御亭主を
邪なDVDを隠し持っている、と、
吊るし上げる際、

証拠となる写真を隠し撮りして突き付けたり、

先方が隠すタイミングで
現場にガサ入れを掛ける訳です。

1-2、学術論文の取っ付き難い理由

で、その学術論文の内容は、

実は、細かくて論旨の絞られた
秀逸な話が多く、
その意味ではマニア垂涎モノです。

しかしながら、

大抵のものは
専門的な用語や概念の理解が前提
書かれていまして、

オマケに、初心者には分り難い
研究のルールもあり、

文体自体も
極めて事務的で味気なく、

結果として、
大抵の方にとっては
取っ付き難い書き物、と、
なる訳です。

浅学なサイト制作者とて、

専攻分野以外の論文なんぞ、

その内容の大半を理解せよと
言われたところで、
思考回路がショートするのが関の山。

ですが、読後には得るものも相応にあり。

したがって、サイト制作者が思うに、

当該分野の
研究者や院生でもなければ、

別に、論旨まで理解しなくとも良い
とも思う訳でして。

無論、サイト制作者も
古代中国史も素人です。

1-3、それでも読む価値はあるのか?

それでも、例えば、

物珍しい図版や表を見たり
見慣れない語句を読んだり、

延いては、
高度な考え方の一端に
触れたりするだけでも、

こういう書き物を
読み慣れない方々にとっては
十分な成果だと思います。

と、言いますのは、

商売を意識した
新書や小説、漫画等では
入手の難しい
貴重でレベルの高い情報が
氾濫している世界につき。

何せ、一次情報か
それに限りなく近い
情報源を持っている人が、

そのオイシイ部分を抜き出して
書き物にまとめたのが
学術論文、という訳でして。

1-4、高い敷居をどう潜るか?

―そうです。
モノは考えようです。

例えば、
論旨に拘らなければ、

新聞の見出しで
読む記事を選ぶように、

興味のある部分から読んでも
良いと思いますし、

最後に書かれている
結論から読んでも
良いと思います。

あるいは、結論だけ、
興味のある部分だけ、でも、
良いと思います。

読者の皆様が
本当にその分野に興味があれば、

例え、その時は分からなくとも、

ヨソで知識を増やした後で
再度読み直せば良いだけの話につき。

先程のDVDの話で言えば、

尋問の動機や
隠匿から発覚までの
時系列的な流れはどうでも良くても、

御亭主の好まれるDVDの中身や
険悪になった夫婦間の
生々しい遣り取り等に
興味がある方も
いらっしゃるかと思います。

まあ、他人の喧嘩を楽しむ場合は、
大抵こんなものでしょう。

余談ながら、
サイト制作者の幼少期のプロ野球は
乱闘全盛期でして、

選手の皆様には
生活が掛かっていることで
申し訳ないながらも、

アレがテレビ観戦の楽しみのひとつ
でもありました。

1-5、知の橋頭保を確保せよ

とはいえ、
そのような摘まみ食いのような
読み方でも、

何本も読んでいれば、

共通部分や研究の争点が見えて来て
その分野のイロハは
分かるかもしれませんし、

そうでなくとも、

興味のある1本を大雑把に読み、
難解な言葉をリスト・アップして
辞書やネット等で調べたりしていけば、

或る程度のことが
分かったりするものです。

このような見地から、

そもそもの学術論文の探し方や
大体の構造を説明し、

そのうえで、

美味しそうな部分
労少なくして吸い取るための
コツめいたものを挙げていこうと
思う次第です。

2、学術論文の探し方

2-1、検索サイトとキーワード

前置きが長くなり、申し訳ありません。

さて、まずは、
論文の探し方ですが、

手っ取り早く探したい場合は、

国立情報学研究所の検索サイト
探します。

アドレスは以下。
ttps://ci.nii.ac.jp/
(1文字目に「h」を補って下さい。)

ここで注目すべきは、
打ち込むキーワード。

正確な論文名や作者名を
打ち込む必要はありません。

それどころか、

研究者の先生方の中には、

細かく調べられることで、

若い頃の未熟な書き物を読まれる方が
恥ずかしいという方が
いらっしゃるかもしれません。

それはともかく、まずは、
大体2、3の言葉を打ち込みます。

例えば、三国志関係の場合、

後漢、魏晋、曹魏、孫呉、蜀漢、
西晋、といった時代や国号。

曹操、諸葛亮、劉備、といった
有名人の人名。

因みに、武将よりも文人の方が
研究は多いです。

その他、兵戸制、九品中正、屯田、
租庸調、将軍、名士、都督といった、
制度や職階、属性等の専門用語。

その他、政治、経済、税制、農業、
服飾、といった、漠然とした
カテゴリー等。

これらを、御自分の興味に合わせて
組み合わせます。

ヒットすれば、
論文のリストが出て来ます。

その中で、
色付きのアイコンのあるものは、

リンクを辿っていけば
論文のPDF形式のファイルを
無料でダウンロード可能です。

大抵は、版元が大学の紀要論文です。

2-2、タダで読めるナルホド論文

折角ですので、

上記の検索サイトから
PDFで無料でダウンロード可能な
論文・研究ノート等から、

三国志関係を中心に、
面白いものをいくつか挙げます。

「面白い」というのは、
ここでは、

例えば、図や表が充実している、
武将の考証に
役に立ちそうである、
話のあらすじの理解を助ける、等を
意味します。
(以下、著者名敬称略、副題省略)

当然、サイト制作者の主観が
相当入っていますので、
悪しからず。

石井仁他
「漢六朝の人名に関する覚え書き」

石井仁
「六朝時代における関中の村塢について 」
「六朝都督制研究の現状と課題 」
「赤壁研究序説」
「都督考」

満田剛
「蜀漢・蒋〔エン〕政權の北伐計畫について 」

上田早苗
「後漢末期の襄陽の豪族」

高橋工
「東アジアにおける甲冑の系統と日本」

並木淳哉
「曹魏の関隴領有と諸葛亮の第一次『北伐』」

落合悠紀
「後漢末魏晋時期における弘農楊氏の動向」

門田 誠一
「魏志倭人伝にみえる『邸閣』の同時代的意味」

山口正晃
「曹魏および西晋における都督と将軍」

津田資久
「劉備出自考」

2-3、学術書が分厚くて高い理由

検索サイト以外に
論文を探す方法は、

例えば、

新書や初心者向けの
ガイドブック等も、

大抵のものには、

脚注や巻末に
典拠が書かれています。

複数の論文が1冊の本にまとまっていれば
しめたものですが、
(例え、分厚い本でも、
サイト制作者にとって必要なのは
その中の30ページ程度とか、
ザラにあります。)

中には、雑誌に掲載されている
ケースも往々にしてあります。

研究者の書く分厚い本は、
書き下ろしではなく
論文集が多いと思います。

中には、
学位論文を手直しして
出版したケースも
少なからずあります。

で、よくあるケースとして、

個々の論文の話が
色々な分野に飛び火しているので、

本のタイトルが嘘にならないように
漠然としたものにする訳です。

そういう本がクソ高いのは、

本屋さんも先生方も、

売れないのを見越して
発行部数を絞っているからです。

そりゃ、出版社さんや
著者の先生方とて、

好きで高飛車な値段を
付けている訳では
ありませんで、

新書同様の価格でも、

それだけ売れて
広く読まれて
書評サイトなんかで
賛否両論沢山貰った方が
嬉しいと思いますよ。

一生懸命書いたものにつき。

一方で、こういう本を
自分の講義の受講者に
教科書として買わせる先生方も
いらっしゃいます。

テキストとして
手っ取り早いからでしょうが。

そして、暫くして、
サークルの部室の本棚や
大学近辺の古書店の棚に
並んだりします。

ワルい学生さんも
少なからずいることで。

ところが、
そのような御本の中には、
たまにヒットするものもあるので
不思議なものです。

2-4、学術雑誌はどこにある?

さて、分厚い学術本のユニットをなす
論文が掲載されている
学術雑誌を実際に手に取りたい場合は、

まずは、各種図書館の検索ページで探します。

大学や県立図書館レベルでないと
中々見当たらないかと思いますし、

あっても、新しい号でなければ
書庫に眠っているケースが大半です。

因みに、国公立大学の付属図書館は
一般利用や貸し出しは可能ですが、
一応、利用規約等を
ホームページで御確認下さい。

そうして索敵が成功すれば、
図書館の司書の方に、

「この雑誌のこの号が
読みたいんですけど。」

と、聞けば、

快く引き受けてくれるか、
あるいは書庫に入れてくれます。

付近の図書館にない場合は、

相互貸借という
遠方の図書館から
取り寄せることが出来る
制度があります。

ですが、送料は自己負担。

3、学術論文の生態

3-1、一番不要な冒頭部分

さて、いよいよ、
漸く入手出来た論文の読み方
入ります。

まず、恐らく目にするのは、
冒頭の部分かと思います。

「はじめに」といった
つまらなそうな見出しがありますね。
―このサイトもそうですが。

しかしながら、実は、
研究者以外の人にとっては、
一番不要な部分です。

で、恐ろしいことに、

書く側にとっても、

一番最後に書く
煩わしい部分でもあります。

そりゃそうです。

書く方も書く方で、
調べる過程が面白いのであって、

事務的な書き物が
面白い訳がありません。

筋道としては、
先行研究の流れを見て
モノを書くのが正道なのでしょうが、

そのような殊勝な人は多くはなく、

自分の調べ事の現状に
先行研究の動向を無理やり合わせ、

締め切りを睨みながら
全ての帳尻を合わせるという
高等なテクニックで
モノを書くのです。

で、その結果、
低からざる確率で、

主にスケジュール面で破綻して、
色々見え透いた言い訳をして
編集の方を困らせる、と。

3-2、論文の常識は書き物の非常識?!

―と、言いますのは、
以下のような理由があるためです。

簡単に言えば、
冒頭の部分で自分の調べ事の
存在意義や正当性を主張する訳です。

我こそは常山の趙子龍、下郎推参!
と、やる訳です。

何の話かと言えば、

今迄の他人様の研究の粗探しをし、
そのうえで、

自分の研究は
今からその欠点を克服するぞ、

我こそは正義で
貴様等賊共は刀の錆びにしてやるから
首を洗って待ってろと、

啖呵を切る訳です。

要は、研究のルールに乗っ取った
御約束でして、
書かされる類の部分。

手紙で言えば、
時候のあいさつです。

部外者には中国語の「手紙」の日本語訳、
程度の扱いでも良いかもしれません、
とは、さすがに言い過ぎか。

3-3、研究者のセールス御断り

もっとも、身分の不安定な
気鋭の大学院生の先生方
(特に、博士後期課程)にとっては、

質の高い論文を数多く書けば
それだけ就職先が増えますし、

反対に、コピペ論文発覚でもすれば
キャリアが終わることで、

自己防衛と売り込みという
攻防一体の戦術
必死になる訳です。

ですが、そのようなしがらみのない
読者の方々にとっては、

家電製品で言えば、
説明書に書かれた
法的な免責事項のようなもの。

製品の免責事項を熟読する人は
あまりいないと思います。

したがって、

興味のない方が
こういうものに付き合う必要は
微塵もありません。

ただし、この冒頭部分には
利用価値もあります。

その論文に関係する研究が羅列され、
そのうえ、要点が手際良く整理されています。

細部に神は宿る、とでも言いますか、
研究者の力量が滲み出る訳です。

まあその、読み慣れた方や
似たような書き物を
探したい方は御一読を、という程度で。

3-4、激辛がクセになる本文

続いて、論文の本体に入ります。

第〇章、第〇節、といったように、
章立てになっている部分です。

ここでは、
主張した説を
資料を用いて証明します。

先述の推理モノで言うところの、
犯人のアリバイ崩しの部分に
相当します。

謂わば、論文という読み物の
核心部分ですが、

方法が専門的なことで
最低限の知識がないと
分り難い内容になります。

ですが、その一方で、
ナマのネタが飛び交うことで、

その片鱗に触れるだけでも
一読の価値はあると思います。

例え、何かひとつでも
分かったことや
ためになったこと、
興味が湧いたこと等があれば、

それだけで十分な戦果です。

3-5、結論と展望と予告倒れと

そして、まとめの部分があります。

「おわりに」、「むすび」、
「総括」等の言葉を使います。

各章ごとに出された結論を整理し、
論文全体の結論を導く訳です。

早い話、タイトルに対する結論
手っ取り早く知りたい場合は、
まず、この部分を読まれたく。

そして、最後に、
その論文で証明出来なかったことや
次のステップでなすべきこと
挙げます。

後、謝辞として、
情報提供者等への御礼の言葉が
書かれていますが、
これは、読者には関係ありません。

それと、蛇足ながら、
著者の公約部分については、

校務や副業が忙しい、
興味を喪失した、
宗旨替えをした、
研究費が確保出来なかった、
院生が役所や企業に就職して
研究そのものを止めた、
人様に言えない事件を起こした、

―という具合に、

院生の方々や先生方々の人生にも
色々あることで、

予告は予告で終わることも
少なからずあります。

サイト制作者も、古代中国史の分野において
続編を待って久しい論文が
いくつかあるのですが、

物書きのやることは、
或る部分は、

学者も作家も漫画家も
存外変わらぬものだと思います。

「俺達の戦いはこれからだ」は、
研究者にもある模様。

【雑談】4、実践?!架空論文を読んでみよう
4-1、して、論文の主題は?

どうも抽象的な話が続いたことで、
そろそろケース・スタディ
いきましょうか。

とは言え、
馬鹿話を大量に混ぜているので、
その旨、予め御断り申し上げます。

例えば、仮に、ここに、

「既婚男性の危険物隠匿に関する考察」
という奇怪な論文があるとします。

要は、既婚の男性が、
邪なDVDを奥様にバレないように
隠す場所についてアレコレ考える、

―という内容の、

正直なところ、
褒めようのない書き物です。

具体的には、

既婚男性の劉備さん(仮名)が
無い知恵絞ってDVDを隠すための
最適な場所を考える訳です。

なお、この人、
困ったことに、

本来、ポータブルのプレイヤー等で
人目を憚ってコッソリ見るべきものを、

「男子たるもの
DVDはハイビジョンの大画面で
見ることこそ本懐。」

―などと主張する始末。

既に、この段階で、
作戦行動に
相当の制約が生じます。

4-2、先行研究は愚策だらけ

さて、本文に入る前に、

先行研究の整理として、
過去の戦訓を紐解きます。

まず、弟分の関さんは、
段ボールに隠して
プレハブに突っ込んで
どの段ボールに入れたか失念し、

もうひとりの弟分の張さんは、
そもそも隠さなかったために
奥様に一方的に絞られまして、

劉備さんは
これらの敗報を受けて、

コイツ等アホだ、
自分はその轍は踏まん、
隠すのは自宅の中に限る、と、
宣います。

4-3、史料読解とその手抜き読み

で、いよいよ論文の本体第1章。

この章では、

過去に発覚してしくじった事例を
思い起こし、それを整理します。

例えば、ゲーム・ソフトの
ラックに混入させたり、

キャスター付きの
テレビ台の下に隠したり、

―というような、
涙ぐましい事例があります。

隠した時の写真や
SNSで「絶対バレねー」と
ドヤった時の書き込み等が残っていれば、

それが、当事者がリアルタイムで残した、
所謂、一次史料となります。
(「史」料は、歴史的な資料を意味します。)

古代中国史の場合、

そのレベルの情報の正確さとなると、

後の王朝の史官が
時の皇帝様を忖度しながら編纂した
史書ではなく、

往時の心境を吐露した詩や
事務的な書簡群や出土品、壁画等
それに当たるかと思いますが、

その種のものは
分野が限定的であり、
史書の威力が依然大きいのも現状。

いずれにしても
サイト制作者や初心者の皆様にとっては
難しい漢文を相手にすることとなります。

ですが、これを当面は敬遠したければ、
すぐ後の文章を御覧下さい。

結構な確率で、
その史料の和訳や要約
書いてあります。

新しい論文程、この傾向は顕著です。

一応、用例をば。

史料1
『貂蝉の思春期の野望 昇天録』
その他10本弱を
ゲーム・ソフトのラックに
突っ込んでやったけど、

ゲームしねー
あいつにバレることなんて
ゼッテーありえね~!

(まるでイメージが
湧かないかと思いますが、
この部分が漢文と思って下さい。

史料1は六年春における
劉備のブログの記事の一部であるが、

同史料より、

劉備が妻の趣味を考慮したうえで
件のDVDを
ゲーム・ソフトのラックに隠し、

さらに、発見を回避することには
絶対の自信を持っていたことが
理解出来る。

―ですが、後日、
それまで興味を示さなかった奥様が、

ネットでイケメン主人公の
バナー広告を見て
ゲームに覚醒するという
急転直下の展開で、

ラックに手入れが入って
呆気ない幕切れと相成ります。

なお、この過程は、

奥様の友人との
メールの遣り取りが
事細かに物語っていますが、
詳細は省きます。

4-4、イロイロな「難しさ」

因みに、
例え、史料あるいは資料の
引用部分でなくとも、

文法がデタラメで
他人様が読んで分り難い文章は、
研究者にとっても悪文です。

このサイトなんぞ、
最高の反面教師です。

さらに、現物は、
簡字体や繁字体とも書体が異なり、
そのうえ腐食や破損も激しく、

それどころか、
モノ自体が偽書の可能性も
往々にしてあるそうで、
(贋作のプロも
少なからずいるという話です。)

このレベルの領域になると、目利きも含めて
判読は殆んど研究者の独断場
想像します。

最近は、現物に放射線なんかも当てるそうで。

もっとも、論文の著者も、
訳はおろか、意味の理解の難しいものを
好んで読ませたい訳ではありません。

むしろ、考えていることは
その真逆です。

小説も漫画も学術論文も、

読者が理解出来て
読者の数だけ
感想があってこその書き物です。

エラい先生方も、徒弟の頃には、

訳の分からない雑用と抱き合わせで、

調べ事の作法は元より、
文章の書き方も厳しく指導されます。

それでも、現役の研究者の書く
文章でさえ、

校正前の原稿は、
誤字・誤植・脱字で溢れかえっています。

ですので、
文章の手直しを喰らうことに
抵抗のある方は、

結局は、人間のやることにつき、
それ程気落ちなさらぬよう。

以上のように、
書く方がいくら読者に
配慮したところで、

残念ながら、
前提となる必要知識の多さが
内容を難しくしているのです。

4-5、表も説明の助けとなる

また、こういう生々しい事例を
羅列・整理する過程で、
を作ります。

隠した場所・日時・
隠匿出来た期間等が
一目で分かるようなものがあれば
便利かもしれません。

例えば、以下のようになりますか。

4-6、瓦解する壮図と悲劇の英雄

さて、この不届きな劉備さん、
度重なる失敗にもめげずに、
さらなる挑戦を企てます。

これが、第2章。

先述の失敗を受けて、
居間の大画面のテレビ付近ではなく、

自室に隠すことにしまして、

こういうのを
御丁寧にも写真に撮り、

ブログで自慢し、

そのうえ、
破廉恥にも
鑑賞した内容について
SNSで仲間と語り合いまして、

こういうのが
史料として記録に残ります。

研究者にとっては、
研究材料が増えたことで
実に香ばしい話であります。

ところが、好事魔多し。

頭を使って隠したことで、
確かに、相応の時間は稼げたのですが、

意外なところに伏兵は潜んでいまして。

それが、事もあろうに
愛する我が子という皮肉。

具体的には、以下。

息子の阿斗君が、

父親のこさえた模型で
遊びたいがために、

父の書斎で
イロイロ物色しているうちに、

御目当ての模型ではなく
ヤバいDVDを見付けまして。

で、素直でかわいい阿斗君。

あどけない表情で、
「おかあさん、これ、なあに?」と。

こういう隠匿・発覚の過程については、

第1章でやったような要領で、

劉備さんのブログやSNSへの書き込み、
奥様や阿斗君の証言等で
裏付けを取ります。

で、その結果、第2章の結論は、

第1章でやらかしたような失敗例が
ひとつ増えた、
ということになります。

これは、何と言いますか、
劉備さんにとっては苦難の道である
夷陵の戦いの開戦を意味します。

もっとも、サイト制作者としては、

「おかあさんには
ないしょにしたげるけど、
なにか、かってよ。」

と、親を強請らないだけ
エラいとも思いますが。

いえ、こういう場合は、むしろ、
狡猾な親が子供を贈賄で抱き込む方か。

4-7、論文では敗将も兵を語る

そして、各章の経過を受けて、
1章と2章をまとめた
論文全体の結論を導きます。

具体的には、以下。

悪いことをしても
必ず想定外のかたちで発覚する、と。

まどろっこしいことを嫌う場合は、
実は、ここを最初に読むのも手です。

むしろ、結論を頭に入れてから
その過程を読む方が、
全体的な流れがブレない分、

理解し易いかもしれません。

先述のように、
生々しい図版や表、史料等を先に読むか、
それとも、結論を先読みするかは、

読者の好みや性格に
よるのかもしれません。

無論、一読して論旨が掴めるようであれば、
それがベストだとは思いますが。

さて、修羅場に直面した
劉備さんの後日談ですが、

健闘空しく
奥様にぐうの音も出ない程に絞られ、

オマケに、危険物隠匿の制裁措置で
小遣いのカットまで喰らって
意気消沈し、

息子の阿斗君に、

「悪いことはいかん。
父さんのような駄目人間には
なるな。

漢書、礼記、六韜、
諸子(諸氏百家の書いたもの)、
商君書を読め。

それと、
いやらしいDVDは
結婚後しばらくは観るな」
(同箇所は、サイト制作者が
『蜀書』先主伝第二を意訳)

―と、説きます。

で、今後の展望はと言えば、

自宅の中で、万難を想定出来れば
もう少し見つかりにくい場所を・・・
となる訳で、

次のステージでは、
第四の男の登場と相成ります。

 

4-8、研究者は裴松之にあらず

因みに、論文の巻末には
注釈が付いていますが、

最後にまとめて羅列する時点で、
最早、重要部分ではありません。

最初に論文を読む分には、
無視しても可。

こういうものに構って
脳内で話の流れを整理する作業を
ぶっ壊すよりは、

無視した方が余程マシです。

で、この部分、
大抵は、引用部分の種本と
その該当箇所が書かれています。

本筋の話を補完するための
枝葉の話なども書かれています。

読んでいる最中に
詳しく知りたい部分が出て来たり、

タネ本や資料自体を
読みたくなった場合に使います。

では、どうして、
こういう小細工をするのかと言えば、

話の流れを簡素化するのが
大きいのですが、

実は、論文を書くこと自体が
限られた字数との戦いでもありまして。

著者も人間です。

要は、情報を精査のうえ取捨選択しても、

捨て切れないグレー・ゾーンがあり、
そういうものに対する
未練がましい部分も出て来る訳でして。

やったことを無駄にしたくない、

そういう半端な部分が
脚注というイジケたかたちで
顔を出す側面もあります。

論文とて、
体裁は事務的でも、

或る程度は
血の通った書き物でもありまして。

4-9、出師の表と研究史の行方

ところが、
蜀の歴史、ではなかった、
研究史に終わりはありません。

今度は、
ワルいコンサルの孔明先生
その志を継ぐという
御決まりの展開になる訳でして、

三兄弟は知恵が足らん、
金庫に隠せば済む話だ。

―と、新説を発表しますが、

ダイヤルの番号を失念して
業者に開錠を頼むという大失態を
犯しまして、

先生より一枚上手の奥様
これに乗じて
開錠の折に強引に立ち会い、

当然ながら、事が露見します。

さらには、

それでは私が、と、
何故か名乗り出た
孔明先生の商売仇の仲達先生も、

金庫の番号を秘書に託すも、

秘書と奥様が、実は、
華道サークルの仲間でして、

雑談の際、うっかり口を滑らせて
結局、失敗例の仲間入り。

死せる孔明、生ける仲達を走らす、
という故事の由来は、
実は、この一件にあり。

―というイカレた与太話は、

さすがに小学生でも
真に受けないと思います。

―斯くして、

累々たる英雄の屍のうえに
男子の野望を極限まで追求した
不毛な先行研究が積み上がります。

次世代の研究者は
大変ですよ、コレ。

何か書こうものなら、

その前に、三馬鹿や迷軍師共の
兵どもが夢の跡なアホな論文を
大量に読まされる訳ですから。

例えば、イ〇リスの
産〇革命の先行研究の整理なんか
こういう具合でタイヘンなんだそうな。

―まあ、その、
実際の論文や研究史
このようなマヌケたものではなく
進歩的で論理的なものですが、

ここでは、

ひとつの論文が書かれて、
それに付随して
研究が蓄積される流れについて、

多少なりとも御理解頂ければ、
(こんなデタラメな筋書きで
分かるか人なんかいるのかよ、と。)

一連の駄文の
存在価値があったとしておきます。

おわりに

そろそろ、今回の御話の結論
まとめようと思います。

かなりサイト制作者の主観
入っているので、

あくまで御参考、というよりは、
話半分で御願い致します。

1、学術論文とは、
コトバンクさんによれば、
新しい研究成果を内容とし、
一定の構成を持った論文である。

2、文系の学術論文の大体の構成は、
大別して、以下のようになる。

一、問題提起と先行研究の整理
二、仮説や課題等の検証や証明
三、結論の整理と展望の設定
四、脚注(各種典拠の明示等)

 

3、構成や文体は極めて事務的であるが、
その分、機能的で、情報のレベルは高い。

 

4、研究者相手の論争でも
想定しない限りは、
論旨まで理解する必要はない。

また、研究のルールに合わせて
読む必要もない。

結論や分かる部分から読むのも
ひとつの手であり、

読後、何かひとつでも
学んだことがあれば
大きな成果である。

 

5、学術論文を探す方法は、
ネットによる論文検索が
大変便利である。

紀要論文の一部は
PDFのファイルを
無料でダウンロード可能。

 

6、古代中国史の場合、
学術雑誌が配架されているのは
主に大学の付属図書館である。

国公立大学の場合、
一般利用が可能。

最寄りの図書館から
相互貸借で
取り寄せることも出来るが、
送料は自己負担。

【主要参考文献】

今回は、特にありません。

【場外乱闘編】多分、こんなの!前漢末の魚鱗甲

以下は、当時の俑と出土した甲片から
復元を試みたものです。

タダでさえヘタな絵で、

そのうえ未完成のものを
御見せするのも
恥ずかしい限りですが、

更新まで間が空いたことで、
開陳に踏み切りました。

近いうちに完成に漕ぎ付けたく。

なお、不明な部分は、
前漢末以前の鎧で見られたパターン
参考にしました。

これも、もう少し細かい部分まで
図解出来ればと思いますが、

既存の御説と喰い違う部分もあり、
特にその辺りは自信が持てないので、
あくまで御参考まで。

【追記】以下が、完成したものです。
  諸々の詳細は、後日の記事にて。

楊泓『中国古兵器論叢』、高橋工「東アジアにおける甲冑の系統と日本」『日本考古学 2(2)』より作成。

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