軍務のイロハ?!『周礼』夏官司馬の軍事演習の件を読んでみよう

はじめに

『周礼』とは、
湯浅邦弘先生よれば、
現存最古の行政法典です。

周公旦が定めた制度を
記録したものと言われています。

前漢の武帝時代に
民間から発見されたようで、

成立した時代は
部分によって異なり、
遅いものは前漢末頃の模様。

具体的な内容は、
行政官の職務分掌法律
軍隊組織、挙句、
工業製品の規格にまで及ぶ、
何とも不思議な書き物です。

で、今回は、『周礼』夏官司馬
四季の軍事演習の件の拙い和訳です。

と、言いますのは、

この件が前回予告した
「両」の部隊編制とも
密接な関係にあるからです。

それどころか、

この書き物が
想定しているであろう
周の時代や春秋時代の初め頃はおろか、

それ以降の時代にも、

長い時の営みの中で
換骨奪胎を伴うとはいえ、

通じる部分が
少なからずありまして、

謂わば、
軍務の歳時記とでも言うべき
示唆に富む内容です。

春秋戦国時代や三国時代等の、
古代中国の軍隊という空間
イメージするに当たって、

一度は目を通して
損はない文章と思います。

特に、軍務の季節性や
戦術レベルの通信インフラ等、

調べ事の起点としては
秀逸な材料かと思います。

また、冬の大閲に至っては、

周以降の歴代の王朝も
時の軍事技術に合わせながら
挙行しており、

清代においても
3年に一度行われるのが
規則でした。

また、内容は元より、

文章自体も、
中々に臨場感があり、
書き物としても面白くあり。

実際、サイト制作者の座右の字引
(『漢辞海』第4版)には、
これが出典の言葉が
いくつもあることで、

昨今の先生方にも
広く読まれていると見受けます。

そこで、今回は思い切って、

摘まみ喰いで
大意を抜くのを止め、

原文で直に
ニュアンスを掴んで頂くことに
しました。

その方が、
伝わり易いうえに
見世物としても
面白いと思ったからで、

声に出すと、
一層、イメージが
湧き易いかもしれません。

とはいえ、

サイト制作者も含めて
漢文の読解力に自信がない方々
数多いらっしゃるであろうことで、

その対策として、
いくつか工夫しました。

まず、流れとしては、
原文を長くなり過ぎないように
四季ごとに分け、

難解か、あるいは、
文意に即しても訳しにくい字には
説明を付け、
(殆ど字引の転写です。)

見よう見真似で
出来にはあまり自信はありませんが、
書き下し文と和訳も用意しました。

それでは、前置きが長くなって
恐縮ですが、
以下、本文に入ります。

なお、原文は維基文庫のものを
多少加工しました。

1、中春

原文

中春教振旅、司馬以旗致民、
平列陳、如戰之陳(陣)。

辨鼓鐸鐲鐃之用—王執路鼓、
諸侯執賁鼓、軍將執晉鼓、
師帥執提、旅帥執鼙、
卒長執鐃、兩司馬執鐸、
公司馬執鐲—
以教坐作、進退、疾徐、疏數之節。

遂以搜田、有司表貉、
誓民、鼓、遂圍禁、
火弊、獻禽以祭社。

中春:3月(旧暦2月中旬)
振(ととの・う):整備する
旅:群衆、周制における
軍隊の編成単位・500名。
(一説に2000名)下大夫が統率。
致:招き寄せる、受け容れる
辨(べん・ず):治める、処置する
路:天子の車
賁(ふん・ほん):大きい、美しい飾り
晉:腰帯等に挿す(訓読み・はさむ)
師:周制における
軍隊の編成単位・2500名で
中大夫が就任。地方長官。
帥:各階級の最高指揮官。
提:馬上で用いる太鼓
鐃(どう):小さい鐘。
卒長(100名)・下士以上が持つ。
これに付随して、
鐘(鉦:打楽器のひとつ)は退却の時の合図。
両司馬:25名を統率する指揮官。
中士。両は伍(5名)5隊で構成される。
鐸(たく):大きな青銅製の鈴
鐲(しょく):小さな鐘のような鈴。
行軍の折、太鼓を調整する時に鳴らした。
坐作:坐は足の甲を地面から浮かせた正座。
作は立ち上がること。
また、「坐作進退」は練兵の一教科。
疾徐:緩急。
疏數(そすう):まばらな様と密集した様。
搜(捜):狩猟。
田も、耕作地以外に、狩猟の意味を持つ。
禽(きん):古くは獣。
後に、鳥と獣の総称。ここでは、鳥か。
有司:役人
表(あらわ・す):上着を被る。
貉(ばく):イタチ科の哺乳類。
アナグマ、むじな。
誓(いまし・む):訓戒や決意を
号令として示す。
遂(すす・む):前進する。
禁:檻・囲い。
火:松明、明かり、灯
社:土地の神、土地の神を祭る廟。

書き下し文

中春に旅を教え振い、
司馬旗を以て民を致し、
平らげて陳(陣)を
列すること、
戰の陳の如し。

鼓鐸鐲鐃之用を辨ず。

王は路鼓を執り、諸侯は賁鼓を執り、
軍將は晉鼓を執り、師帥は提を執り、
旅帥は鼙を執り、卒長は鐃を執り、
兩司馬は鐸を執り、公司馬は鐲を執る。

以て坐作、進退、
疾徐、疏數之節を教ふ。

遂(すす)むに以て田を搜し、
有司貉を表(あらわ)し、
民に誓(いまし)む。

鼓し、遂みて圍を禁ず。

火を弊し、禽を獻じ以て社を祭る。

和訳

3月に群衆を訓練し、
司馬は旗で民を呼集し、
雑踏を収拾して
戦時のように布陣させる。

軍楽器の用途を確認し点検する。

王は専用車据え付けの太鼓を、
諸侯は大型の太鼓を、
軍将は腰帯に挿す太鼓を、
師帥軍用の小さい太鼓を、
卒長は小さい鐘を、
両司馬は大きな青銅製の鈴を、
公司馬は小さな鐘のような鈴を扱う。

そして、科目としての
戦闘動作を教える。

部隊は前進しつつ狩りを行い、
役人はむじなの毛皮を被り、
民に指示を出す。

太鼓を鳴らし、
前進して狩猟地を封鎖する。

松明を消し倒し、
祭壇に供え物の鳥を献上し、
土地の神を祭る。

2、中夏

原文

中夏教茇舍、如振旅之陳。

群吏撰車徒、讀書契、
辨號名之用、帥以門名、
縣鄙各以其名、家以號名、
鄉以州名、野以邑名、
百官各象其事、以辨軍之夜事。

其他皆如振旅。

遂以苗田如搜之法、
車弊、獻禽以享礿。

中夏:6月(旧暦5月中旬)
茇(ばつ):野宿する、除草する。
舍:家屋。
吏:役人の総称。
漢代以降は下級役人を意味する。
撰(せん・じる):結集する。
車:戦車。
徒:随伴歩兵。
戦国時代以降のような
歩兵の単独兵科ではない。
書契:契約・記録等の文書
號(号、さけ・ぶ):声高に叫ぶ。
門:家、一族。
縣(県):地方の行政区画。
周制では遂に属し、
1県は4郡に分かれる。
その他、畿内を意味する。
天子の住む都城の
周囲1000里(周代:1里=324m)
以内の地域。
鄙:地方の行政単位。500戸。
もしくは、辺境の地。
追記:土地の区分けで、5鄙=1県。『周礼』地官より。
家:卿大夫の領地。
鄉:集落の編成単位。周制では12500戸。
州:周制における集落単位。2500戸。
因みに、100戸=1族、
5族・500戸=1党。5党=1州。
野:王城より200~300里離れた土地。
邑:大夫の領地。
象(かたど・る):則る(のっとる)、
倣う
事:職務・任務
享(すす・む):祭って供え物を捧げる。
礿(やく・よう):天子が行う祭。

書き下し文

中夏に茇舍に教ふ。

旅の陳を振(ととの)ふが如し。

群吏は車徒を撰じ、書契を讀し、
號名の用を辨じ、
帥は以て門の名を、
縣鄙は各以てその名を、
家は以て號名を、鄉は以て州名を、
野は以て邑名を、
百官各其事を象(かたど)り、
以て軍の夜事に辨ず。

その他皆旅を振うが如し。

遂むに以て苗田の搜之法が如く、
車を弊し、禽を獻じて以て礿を享す。

和訳

6月に除草された家屋で
軍事訓練を行う。

呼集された群衆は
整然と布陣するように行う。

居合わせる役人達は
戦車と随伴歩兵を結集し、
規則を読み上げ、
呼称の内容や正誤を確認し、

最高指揮官は一族の名を、

【追記】

これは誤りでして、
文字通り門の名前です。

例:「東門」、「桐門」等。

当時の卿以上の軍将は、
城門を在所として統治を行い、
『春秋左氏伝』にも
例文があるそうな。

つまりは、

恐らくは、
或る程度の公共性を帯びた
通り名のようなもので、

門の名前を出せば、
人物を特定出来た、

という話だと思います。

典拠:『周礼注疏』28巻

【追記・了】

縣や鄙はその名を、
卿大夫の領地はその名称を、
郷はその州名を、
王都よりの遠方の地は
大夫の領地の名を、

それぞれの担当の役人は
これに準じて呼称する。

そして、これを
夜間の職務として扱う。

その他は、
群衆を教練するように行う。

耕作地で
狩猟の作法に準ずるように前進し、
戦車を駐車し、
鳥を献上して
天子が行う祭祀の供え物とする。

3、中秋

原文

中秋教治兵、如振旅之陳。

辨旗物之用、
王載大常、諸侯載旗、
軍吏載旗、師都載旃、
鄉家載物、郊野載旐、百官載旟、

各書其事與其號焉。

其他皆如振旅。

遂以獼田如搜之法、
羅弊、致禽以祀祊。

中秋:9月(旧暦8月中旬)。
治(おさ・む):管理する、統治する。
旗:『周礼』春官・司常之職によれば、
「九旗」という概念があり、
漢代の『釈名』にも解説がある。
これは、旗の異なる図柄や飾り
(例えば、斿:ユウ・はたあし、
旗の下辺に付ける、の数等)によって、
等級や用途を表すことを意味する。
常:日月を描いた旗。
旗:虎と熊の図。
斿が5本あり、集合を意味する。
演習に際して、
民衆を呼集する折に使う旗もこれか。
軍吏:軍隊の各階級における
長官の総称。文官も含む。
旃(せん):図柄は無地の赤。
柄は曲がっている。
無事であることを象徴する。
物(ぶつ):多色のもの。
多色の絹を縁に縫い付けて燕尾とする。
物が雑則であることを象徴する。
旐(ちょう):亀と蛇の図柄。
亀と蛇は、災厄を避ける象徴。
出棺を先導する旗でもあり、
先行きの形勢をはかる用途も持つ。
旟(よ):隼の図柄。名誉を象徴する。
獼(び):「獼猴」でサル科の哺乳類。
上半身は灰褐色、
腰以下は黄橙色の毛に覆われ、
群居する猿。

【追記】

獼(せん)は、君主が行う秋の狩猟。

したがって、「獼田」も
狩猟を意味することと思います。
春は蒐(しゅう)、夏は苗(みょう)、
あるいは苗田、そして冬は狩(しゅう)。

【追記・了】

羅:鳥を捕える網。
祊(ほう):宗廟の門内に設けて
祭りを行う場所。
宗廟で祖先を祭る祭礼。

書き下し文

中秋に兵を治むを教う。

旅の陳を振るうが如し。

旗物の用を辨ず。

王は大常載(お)び、
諸侯は旗を載び、軍吏は旗を載び、
師都は旃を載び、鄉家は物を載び、
郊野は旐を載び、百官は旟を載び、

各その事とその号を書(しる)すなり。

その他皆旅を振ふが如し。

遂むに以て獼田を搜すの法が如し。

羅を弊し、
禽を致すに以て祊に祀(まつ)る。

和訳

9月に練兵を命令する。

群衆が整然と布陣するように行う。

旗の用途を確認し、点検する。

王は日月の図柄の旗を、
諸侯・軍の各階級の長官は
虎と熊の図柄の旗を、
都の師は曲がった柄で無地の赤旗を、
郷・家は多色の旗を、
遠方の勢力は亀と蛇の図柄を、
百官は隼の図柄の旗を携帯し、

旗には規則に定められた
図柄と称号を記す。

その他は、
群衆を練兵するように行う。

山野で狩りを行う作法に
準拠するようにして前進する。

鳥を捕える網を倒し、
鳥を招き寄せ、
宗廟の門内で祭礼を行う。

4、中冬

原文

中冬教大閱。

前期、群吏戒眾庶修戰法。

虞人萊所田之野、
為表、百步則一、
為三表、又五十步為一表。

田之日、司馬建旗于後表之中、
群吏以旗物鼓鐸鐲鐃、各帥其民而致。

質明、弊旗、誅後至者、
乃陳車徒如戰之陳、皆坐。

群吏聽誓于陳前、斬牲、以左右徇陳、
曰「不用命者斬之!」。

中軍以鼙令鼓、鼓人皆三鼓、
司馬振鐸、群吏作旗、車徒皆作。

鼓行、鳴鐲、車徒皆行、及表乃止。

三鼓、摝鐸、群吏弊旗、車徒皆坐。

又三鼓、振鐸作旗、車徒皆作。

鼓進、鳴鐲、車驟徒趨、及表乃止、
坐作如初。

乃鼓、車馳徒走、及表乃止。

鼓戒三闋、車三發、徒三刺。

乃鼓退、鳴鐃且卻、及表乃止、
坐作如初。

遂以狩田、以旌為左右和之門、
群吏各帥其車徒以敘和出、
左右陳車徒、有司平之、
旗居卒間以分地、前後有屯百步、
有司巡其前後、
險野人為主、易野車為主。

既陳、乃設驅逆之車、
有司表貉于陳前。

中軍以鼙令鼓、
鼓人皆三鼓、群司馬振鐸、車徒皆作。

遂鼓行、徒銜枚而進。

大獸公之、小禽私之、獲者取左耳。

及所弊、
鼓皆駭、車徒皆躁。

徒乃弊、致禽馌獸于郊、
入、獻禽以享烝。

中冬:12月(旧暦11月中旬)。
閲(えつ):集める、まとめる。
大閲で大規模軍事演習。
前:あらかじめ、前もって。
期:決まった、
あるいは約束した時間・機会。
周期的な時間。
戒(いまし・む):命ずる、告げる。
眾(衆)庶:多くの人々、万民。
虞(ぐ)人:山林・沼沢を担当する役人。
虞師。呉の虞翻の御先祖様の職業か?。
萊(らい):耕作地が荒れ、草が生える。
表:標識。
標識を立てて
距離を計測する方法は、
『蔚繚子』にもある。
歩:周制は1尺18cm。
6尺=1歩=108cm。
質明:明け方。
事もあろうに、
字引の当該の項目の隅に
こっそり書いてあった。
聽(聴、したが・う):勧告や意見に従う。
牲(いけにえ):祭祀や食用に供される家畜。
驟(は・す):速く走る。
趨(はし・る):早足で駆ける。
闋(けつ):楽曲が終止する。
卻(しりぞ・く):後ろに下がる。
狩田:冬に兵を訓練するための狩猟。
旌(せい):五色の鳥の羽を裂いて
飾りとしたもの。
旗頭を、羽を裂いたものと
カラウシの尾で飾る。
兵士の意気を奮わせる。
指揮官用の戦車に立てる。
敘(つい・ず):順序立てる。
和(と、わ・す):~と、双方。合わせる。
屯(たむろ・す):駐屯する。
守りの為に留まる。
險(険):地形が険しい。
山川が危険で交通困難な難所。
驅(駆)逆:獣を追い、
狩場に追い込み逃走を阻止する。
鄭玄注。
枚:兵士が奇襲を行う際に噛む
箸のような木切れ。
例えば、『司馬法』にもこの件がある。
駭(おどろ・く):驚き騒ぐ。
躁(さわ・がし):焦っている、
あるいは、平静でない様。
弊(つか・る):疲れる。
馌(饁、おく・る):狩猟の時、
動物を捧げて神を祭る。
郊:国都から半径50里が「近郊」、
100里が「遠郊」。
烝:火で炙る。

書き下し文

中冬に大閱を教ふ。

前期、群吏眾庶を戒め戰法を修む。

虞人萊所田之野に表を為す。

百步を則ち一とし、三表を為し、
また五十步に一表を為す。

田の日、
司馬は表の中の後ろに旗を建ち、
群吏は旗物鼓鐸鐲鐃を以てし、
各帥その民を致す。

質明、旗を弊し、後に至る者を誅し、
乃ち車徒を陳すること戰の陳の如く、
皆坐す。

群吏は陳前に誓に聽い、
牲を斬り、以て左右の陳を徇し、
曰く「命を用いざる者は之を斬る」。

中軍は鼙を以て鼓令め、
鼓人皆三鼓し、
司馬は鐸を振え、
群吏は旗を作(た)て、
車徒は皆作つ。

鼓行し鐲を鳴らし、車徒皆行き、
表に及んで乃ち止む。

三鼓し、鐸を摝し、群吏旗を弊し、
車徒坐皆す。

また三鼓し、鐸を振るい旗を作ち、
車徒皆作つ。

鼓進し、鐲を鳴らし、
車は驟せ徒は趨り、
表に及んで乃ち止み、
坐作すること初めの如し。

乃ち鼓し、車は馳せ徒は走り、
表に及んで乃ち止む。

鼓は三闋、車は三發、
徒は三刺を戒む。

乃ち鼓は退き、
鐃は鳴り且つ卻(しりぞ)き、
表に及んで乃ち止み、
坐作すること初めの如し。

遂みて以て田狩し、
以て旌を左右に和する門に為し、
群吏各帥はその車徒を以て
敘じて和して出で、

左右の陳の車徒、
有司これを平らぐ。

旗の居する卒の間を以て地を分け、
前後百步屯する有り、
有司その前後を巡り、

險野は人を主と為し、
易野は車を主と為す。

既に陳し、乃ち驅逆の車を設け、
有司は陳前において貉を表す。

中軍は鼙を以て鼓(う)たしめ、
鼓人皆三鼓し、群司馬鐸振るい、
車徒皆作つ。

遂みて鼓行し、
徒は銜枚し進む。

大獸はこれを公にし、
小禽はこれを私にし、
獲は左耳を取る。

弊すところに及び、
鼓は皆駭き、車徒は皆躁がしくす。

徒は乃ち弊れ、
郊において禽を致し獸を馌し、
入りて、禽を獻じて以て烝して享す。

和訳

12月に軍の大規模な巡視を行う。

期間中に先立ち、
諸役人は群衆に命じて
段取りを覚えさせる。

山林沼沢を担当する役人は、
荒地や狩場に標識を立てる。

108mごとに標識を3本立て、
さらに54m先に標識を1本立てる。

狩猟の日に、
司馬は標識の後ろに旗を立て、
諸役人は旗や楽器で合図し、
各指揮官は群衆を呼集する。

明け方に旗を倒し、
遅れる者を斬り、
戦車や随伴歩兵を戦時のように布陣し、
正座する。

諸役人は陣の前で
上官の訓示・命令を拝聴し、
左右の陣を巡視し、
「命令を聞かない者は斬る」と言う。

中央の軍は小さい太鼓を打たせ、
担当役人は規則通りの調べを
三度鳴らし、
両司馬は大きな鈴を鳴らし、
諸役人は旗を立て、

戦車と随伴歩兵は全員起立する。

太鼓を盛んに打ち、
小さな鐘を鳴らし、

戦車と随伴歩兵が
行軍の速度で前進し、
標識に到達して停止する。

太鼓の調べを三度打ち、
両司馬は大きな鈴を鳴らし、
諸役人が旗を倒し、
戦車兵と随伴歩兵は全員正座する。

さらに太鼓の調べを三度打ち、
両司馬は
大きな鈴を鳴らして旗を立て、
戦車と随伴歩兵は起立する。

最初の行動のように、
太鼓で前進し、小さな鐘を鳴らし、
戦車は快走し、随伴歩兵は速足で駆け、
標識で停止して正座する。

さらに太鼓を鳴らし、
戦車は快走し、随伴歩兵は早足で駆け、
標識で停止する。

太鼓の調べを三度打ち、
戦車は三度攻撃態勢を取り、
随伴歩兵には
武器で三度突くことを命じる。

その後、太鼓の担当は後退し、
卒長は小さい鐘を鳴らしながら後退し、
標識の前で停止し、
最初のように正座する。

前進して狩猟を行う際に、
五色の鳥の羽を裂いて飾りとした旗を
左右双方の陣地の門に立て、

諸役人や各指揮官は
指揮下の戦車や随伴歩兵を
秩序立てて結集して出撃し、

担当役人が
左右の陣の戦車と随伴歩兵の秩序を保つ。

各々の旗手間の間隔を108m空け、
担当役人がその前後を巡回し、

険しい地形には歩兵を、
平坦な地形には戦車を配置する。

布陣した後、獣の駆逐用の戦車隊を編制し、
担当役人は陣の前でムジナの毛皮を被る。

中央の軍は小さい太鼓を打たせ、
太鼓の担当は調べを三度打ち、
両司馬達は大きな鈴を鳴らし、
戦車兵と随伴歩兵は全員起立する。

太鼓を鳴らしながら前進し、
随伴歩兵は
木切れを口に挟みながら行軍する。

大きな獣は官有物、
小さな鳥は私物とし、
獲物の左耳を切り取る。

動物を狩る瞬間、
太鼓が鳴り響き、
戦車兵と随伴歩兵はどよめく。

随伴歩兵が疲れたところで、
城の近郊で狩った鳥を集めて
祭礼を行い、

入城後に獣を火で炙って
祭礼の供え物とする。

【主要参考文献】(順不同・敬称略)

戸川芳郎監修『漢辞海』第4版
湯浅邦弘『中国思想基本用語集』
薛永蔚『春秋時期的歩兵』
篠田耕一『三国志軍事ガイド』
その他、過去の記事における
読者の方の和訳等も
参考にさせて頂きました。

【追伸】

大変遅れて申し訳なく思いますが、
井波律子先生の御冥福を
心より御祈り申し上げます。

特に、三国志の正史の和訳には
このうえなく御世話になりました。

また、今回の拙い和訳にあたって、
事の煩雑さを
多少なりとも垣間見た心地です。

その他、これを書くにあたって、
せめて、背景を説明する
論文のひとつでも
読みたかったのですが、

最寄りの国立大学が
学外者の立ち入りを
許可しない等、
コロナで行動が
制約されているうえに、

例によって
サイト制作者の時間管理が甘く、

旗のことを調べて
時間を浪費する等して、

結果として、
投稿が遅れに遅れて
大変恐縮です。

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