肩肘張らずに読める?!良書アレコレ

残念ながら、前回の続きを
盆までに書けなかったことで、
せめて、その時間稼ぎの方法とでも言いますか、

古代中国の戦争や『三国志』の人物に関する
割合入手しやすい良書
いくつか紹介させて頂こうと思った次第です。

以前の記事においても、
書名・著者名だけは
参考文献として何度も掲載してはおりますし、

ここで紹介する本の要旨も、
何度となく
記事で書いているような気もしますが、

今回は、少々説明も付け足します。

 

「良書」の条件としては、

 

1、2018年8月現在、絶版ではないこと。

 

2、税抜で2000円以下でかつ、
地方都市でも大型書店であれば
店頭に並んでいるであろうこと。
田舎の県在住のサイト制作者も店頭で購入)

 

3、高校の世界史程度の大体の流れ
(高得点である必要はありません。)
分かっているか、もしくは、
三国志に興味がある程度の知識
気軽に読めるレベルの本。

 

以上の3点を想定しています。

 

ですが、博識な方の書かれた本というのは
実に不思議なものでして、

入門書程度の平易な内容でも
物事の核心部分をズバズバ突くもの
ありまして、

サイト制作者も
こういう御本からも随分と示唆を得た次第です。

ただ、研究者の書いた本につき、
視野の広い理解を行うために
話が多岐にわたる宿命にあり、

興味のない部分は
読み飛ばすか後から読むかするような工夫も
時には必要かもしれません。

また、文体や内容との相性等もあることで、

店頭で見付けた際には、
立ち読みして感覚を確かめられんことを。

 

それでは、
前置きが長くなりましたので、
そろそろトップ・バッターをコール致します。

後、著者名は敬称略です、悪しからず。

 

1、高木智見『孔子―戦えば則ち克つ』
山川出版社・世界史リブレット

「世界史リブレット」のシリーズで
100ページにも満たないのですが、
内容は非常に濃い本です。

さらに、一見、儒教関係の本と
思われるかもしれませんが、

同書は孔子が戦士の子弟で
職業訓練を受けている点や、

原始儒教自体が
春秋時代の戦時道徳をベースにしているという
興味深い考察を行います。

さらには、

中国史上でも稀である、
春秋から戦国への社会変動の様相、

―具体的には、
騎士道を体現したような
ストイックな戦車戦から
権謀術数の権化のような
ルール無用の歩兵の機動戦への変遷と、

それに伴う銃後の体制の整備、

―具体的には、領内に巨大城郭が乱立し、
人員・物資の大量動員を可能にする
集権体制の確立等について、

本質的な部分を
分かり易く説明しています。

 

『キングダム』の戦国時代の戦争や
三国志の戦争も、
まさにこの本の内容の文脈で
登場したタイプの戦争につき、

三国志や戦国時代を理解するために
数世紀のスパンでモノを見たい、
という方に御勧めする御本です。

 

―後、何と言いますか、

文学的な内容ではないのですが、

読後の感想としては、
良い意味で、こういうタイプの本には珍しい、
結構情熱的な御本だと思いました。

 

 

2、渡邊義浩
『「三国志」の政治と思想 史実の英雄たち』
講談社・講談社選書メチエ

 

このサイトで記事を書くにあたって、
渡邊先生の御本を使うのが当たり前のようになり、
中々御礼を申し上げる機会がなかったのですが、
漸くその機会に恵まれました。

同書は、恐らく、
先生の学術論文のダイジェストだと思います。

さて、サイト制作者にとっては、
三国志の武将の見方が激変した御本でして、

仕事を辞めてこの本を読んだ折、
あまりの内容の面白さに、
丸1日掛けてノートを取りました。

 

社会の上澄みは、
学問を資力とした人脈が無ければ
何も動かない狭い世界。

大国や官僚制度の存在が前提で
初めて成立する
文武両道の盧植等「儒将」のカテゴリー。

脇を学歴名士で固める袁紹と、
学歴エリートにも拘わらず
北辺の修羅場で揉まれて
名士を排除し商人や傭兵と付き合った公孫瓚。

儒教名士でありながら
そのしがらみに嫌気が指して
ポエムやろうぜと居直った曹操。

ゴリゴリの法治主義「猛政」の
曹操と孔明に対して、
その反対の「寛治」をやってのし上がった、
と、ドヤる劉備。
そして、滅びる袁紹。

地元名士と揉めまくって
身を滅ぼした孫策と、
その後始末で連中(陸遜とか!)
に頭の上がらない孫権。

―と、言う具合に、

この時代の価値観や、
それを通しての人物・政策の評価方法等について
丁寧に説明されている御本。

 

少し難しい内容ですが、
『三国志』ゲーム好きの方には
難しい部分を読み飛ばしながらでも
一通り読んで頂きたい御本です。

 

3、渡邊義浩『三国志 運命の十二大決戦』
祥伝社・祥伝社新書

残念ながら、内容とタイトルが
どこか一致していない御本。

この辺りは、思想史に強い先生の性格が
滲み出ているような気もします。

しかしながら、豊富な史料の解析から
三国時代の時系列的な流れの
行間を説明する本として捉えれば、
成程と思う部分が多くもあり。

特に、意外に実証的な
『三国志演義』の話の盛り方や、
劉焉・劉璋政権の構造や始末の説明等が
核心部分を突いて、かつ、分かり易かったと
思います。

 

4、高島俊男『中国の大盗賊・完全版 』
(講談社・講談社現代新書)

アカポスを辞めて
作家に転向された先生の書かれた
御本だけあって、
文体も内容もブッ飛んでいます

笑えるという意味では、
今回紹介する中では一番だと思います。

―それはともかく、
真面目な話、
具体的な内容としては、

王朝時代(民国時代にも片足を突っ込む)
の中国における
向こうで「盗賊」と呼ばれる
アウト・ローの武装集団の定義や、

末端の社会の
「兵匪一体」に代表されるようなカオスさ、

人が集まって兵乱になるロジック等が、

丁寧で分かり易く説明されています。

 

後、最終章の毛沢東の悪口については、

このサイトとしては、どうも、
本格的に扱うこと自体が
テーマから外れていそうなことで、

一読の価値のある
中々面白い余興としておきます。
古典の底力とでも言いますか。

 

5、篠田耕一『武器と防具 中国編』
新紀元社・Truth In Fantasy13

篠田先生の『三国志軍事ガイド』が絶版につき、
こちらにしました。

出版社自体が歴史系その他の
サブカルチャーの考証に滅法強いところ
なのですが、

 

中でも同書は、

古代から火砲が登場した直後までの
王朝時代における

冷兵器・暗器・火器といった
向こうでは基本である
武器のカテゴライズや、
時系列的な発展の系譜、製法、
城郭攻防時の多種多様な兵器の用途、

―といった具合に、

実際に戦争や乱闘で使用された
武器・防具・兵器等について
詳細な説明を行っております。

無論、有用なイラストも豊富です。

 

さらに、戦争は元より、
カンフー等の武術が好きな方にも
色々と示唆を与えるであろう御本です。

ヌンチャクが元は籠城側の武器で
墨子の本に出て来るとか、
目からウロコが落ちました。

 

6、浅野裕一『孫子』
講談社・講談社学術文庫

『孫子』の解説書です。
原文・書き下し文・和訳と、
それに付随する説明が記してあります。

この種の識者の和訳本の有用なところは、
訳の分かり易さ以上に、

度量衡や部隊の編制単位等、
当時の用語の説明が
分かり易いことです。

また、この御本については、
巻末の『孫子』の時代背景や
成立の経緯の説明が充実しています。

あくまで個人的な意見ですが、

企業人や自衛官の方が
御書きになったものよりは
こちらの方を御勧めします。

孫子の兵法の限界めいたものも
見え隠れすることで、
物事の良し悪しを公平に見ることが
出来ると思うからです。

 

 

最後に、
まとめという程のことではありませんが、

ここで紹介します御本が
皆様の御役に少しでも役に立てばと
願うばかりです。

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