鉄の話を始めるにあたって【雑文】

はじめに

 

更新が滞り、そのうえ、
次の記事の投稿にもまだ日が掛かりそうなことで、
進捗状況について少々綴ります。

 

 

1、白兵戦(こまったとき)の鉄頼み

 

具体的には、
鉄についての御話を予定しています。

鎧の話の延長で素材の話ということで、
斜め上のベクトルでガッカリされた方も
少なからずいらっしゃるかと思います。

 

しかしながら、
前回の記事でも触れました通り、
後漢・三国時代の戦争と鉄とは
不可分の関係にあります。

 

ビスマルクの時代どころか、

古代の戦争とて
鏃も刀剣の刃も消耗品につき、

鉄であれ銅であれ、
金属がなければ話になりません。

 

それも、地球自体が鉄の塊とはいえ、

文明の利器として
マトモに使えるように加工するためには、

膨大な量の資源や動力を必要とします。

 

参考までに、

例えば、以下のような状況は
どうでしょうか。

 

三国時代の呉や蜀のような
分権的な政権で
軍事力の中核を成す豪族連中は、

自分達の領地から
自前で武器と人員を調達して
政権内で大きい顔をしています。

特に、孫権没後の呉なんか、
ひどいものです。

孫晧があれだけの専横をやったのも、
こういう弊害が背景にありました。

 

ところが、
名士や軍閥として皇帝様の足を引っ張る
コイツ等にも泣き所はありまして。

 

具体的には、
在籍する勢力が大敗して
連中が本領を失陥すれば、

食糧どころか
武器の調達・補充もままなりません。

 

領内の鉱山や製鉄所とて、
経済力や軍事力の大きな泉源のひとつです。

 

そのように考えると、

関羽のヘマによる荊州の失陥が
劉備政権にとってどれ程危機的な状況かが
垣間見えようかと思います。

 

単に劉備政権が領土を失って
直接的な軍事力・経済力を
喪失するだけではなく、

豪族の軍事力を背景にした政治力にも、

そして、劉備政権の、
本国・荊州と植民地・蜀という
支配・被支配の関係にも、

危機的なレベルの悪影響を及ぼす訳です。

 

 

2、どこまで続く理系学習(ぬかるみ)ぞ

このように、
鉄の生産が軍事力の決定的な要因
ということもあってか、

この分野の先行研究が多いことで、

理系がダメな素人の浅学では
一筋縄ではいきません。

 

以下が日本の学術研究の
生臭いところでもあるのですが、

論文が書かれた時代に盛んであった産業、
思想、政治、政争といった
天下国家な分野は、

大抵どの時代の研究でも
先行研究が多いのが相場に見受けます。

 

しかも、読んだ論文自体も、
技術史を扱っているとはいえ
当然ながら文系の内容の域を出ておらず、
土俵際で辛うじて残った心地。

 

とはいえ、専門家の方が
入門書で噛砕いて教えて下さった
初歩的な知識を以て
漸く或る程度理解出来るという、
我が身の不甲斐なさ。

 

そのうえ、サラッと記事を書くつもりで
こういうものを読んだのが、
当然ながら、そもそもの誤りでして。

 

具体的には、

製鉄のイロハは元より、
(先の記事にも炭素含有量についての理解に
誤りがありました!)

当時の製鉄所の立地や間取り、
炉、鉱石、銑鉄の用途別の種類、
鍛造か鋳造か、といった、武器の製造方法等、

整理すべき事項が続出した次第。

 

後、漢代の鉄官が置かれた地域
採鉱区や製造拠点というよりは
鉱石や鋳鉄、製品の
集積地という印象を受けますが、

【追記】

これは間違いです。
鉱山と木炭の生産地を兼ねた場所が多く、
生産地を抑えているのだそうな。

事実、郡の治所ではない所にも
置かれています。

【了】

分布自体は、
何かしらの参考になろうかと思います。

 

さらに、上記の事項も、或る程度は、
図解する必要があろうかと思います。

製鉄に対する予備知識が全くない状態で
文字だけ読むのも相当な苦行だと思います。

―ええ、サイト制作者からして、そうでした。

 

こんなの、
鉄鋼や機械関係の御仕事や研究等を
されている方以外は、

言葉自体が分からないか
イメージが沸きにくいかもしれません。

 

ええ、斯く云う無教養なサイト制作者がそうでして、

篠田耕一先生の御本で
鉄と武器の因果関係について
興味を持つまでは、

太平洋戦争で
日本は鉄やレアメタル不足に苦しんだ、

鉄は銅より硬い、―程度の御粗末な認識でした。

もっとも、今も、
それに少し毛が生えた程度ですが。

 

ああ、そういや、

ス〇イリムで、
ドワーフだのオリハルコンだの、
得体の知れない金属のインゴットを溶かして
武器を作ったり、

フォー〇・アウト4で、
家電のジャンクをバラして
銅やアルミニウムをせっせと回収しましたが。

 

後、仕事柄、
銅のゴツゴツした汚いインゴットや廃材は
毎日見てますよ~!

もっとも、製造部門ではありませんが。

 

実に恥かしいノイズは無視して下さい。

 

もっとも、ここ10年位は、
理系分野の初心者向けの分かり易い本が
数多く刊行されていることで、

個人的には、本当に助かっています。

 

最後に、中身の無い駄文だけでも何ですので、

御参考までに、
描き上げたアレな図解を掲載致します。

この図解も、間違いがないかヒヤヒヤしています。

 

趙匡華『古代中国化学』・篠田耕一『武器と防具 中国編』・菅野照造監修『トコトンやさしい鉄の本』・柿沼陽平「戦国秦漢時代における塩鉄政策と国家的専制支配」等(順不同・敬称略)より作成。

 

 

【主要参考文献(順不同・敬称略)】
佐藤武敏「漢代における鉄の生産」
佐原康夫「南陽瓦房荘漢代製鉄遺跡の技術史的検討」
趙匡華『古代中国化学』
篠田耕一『武器と防具 中国編』
山口久和『「三国志」の迷宮』

カテゴリー: 兵器・防具, 言い訳 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。